第30章

彼女が慌ただしく救急室に駆け込んだ時、山口玥はすでに傷の処置を終え、病室に移されていた。

前田南はドアを開けて入った。

「お母さん、これって本当に必要なの?私が見合いに行かないからって、自殺騒ぎを起こすなんて、人に笑われるのも恐くないの」

「来てくれたのね。もう私のことなんて気にも留めてないんだと思ったわ」山口玥は彼女を一瞥した。

前田南は心の中で絶句した。

彼女はただ今結婚したくないだけで、罪を犯したわけじゃない。

でも、山口玥には絶対に理解してもらえないだろう。

「あなたは私の実の母親だから、もちろん気にかけてるわ。見殺しにするわけないでしょう。でも結婚は私の人生でとても重...

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